第六回翻訳ミステリー大賞決定

 子供向けに翻訳・リライトされたホームズやルパンとの出会いによってミステリーを知り、その後の人生を決定づけてしまった会員は少なくないだろう。
 翻訳ミステリーの面白さは少しも変わらず、むしろ作品の質や量は共に昔より豊かになっている。しかも先達に劣らない名探偵・名刑事も数多くいる。だが日本における知名度はホームズ一人に負けている……。
 そんな現状に一石を投じ、一人でも多くの読者に翻訳ミステリーを手にとってもらう一助にと、小鷹信光、深町眞理子、白石朗、越前敏弥、田口俊樹のベテラン翻訳家五氏を発起人として二〇〇九年に設立されたのが、「翻訳ミステリー大賞」であり、それを支援するためのウェブサイトが「翻訳ミステリーシンジケート」である。このサイトには翻訳家や書評家によるエッセイや書評が数多く連載され、ほぼ毎日のように更新されている。ちなみに今期の協会賞受賞作である霜月蒼「アガサ・クリスティ完全攻略」の初出もこのサイトであった。
 翻訳ミステリー大賞のユニークなのは、投票者が翻訳書のあるプロの翻訳家に限られている点である。選考は現役の翻訳者から寄せられた推薦作が、予選委員会によって五作に絞られ、その最終選考作をすべて読んだ翻訳者の投票によって大賞作が決められるという仕組みとなっている。今期は四月二十五日(土)に東京都大田区の「大田区産業プラザPiO」にて開催された授賞式&コンベンションの公開開票式において、最多得票を集めたケイト・モートン「秘密」(青木純子訳・東京創元社)が大賞に選ばれた。
 これからも面白い作品の翻訳と顕彰に期待したい。

 投票結果は以下の通り。
『秘密』22票
『もう年はとれない』20票
『容疑者』14票
『その女アレックス』11票
『ゴーストマン/時限紙幣』5票