訃報

会員・船戸与一氏死去

 会員の船戸与一氏(本名・原田建司)が、四月二十二日胸腺癌のため亡くなった。七十一歳。船戸氏は一九四四年山口県下関市生まれ。早稲田大学法学部卒。出版社勤務の後、ルポライターになり、豊浦志朗名義で「硬派と宿命」(七五年)「叛アメリカ史」(七七年)を上梓した。また外浦吾朗名義でさいとうたかをの劇画「ゴルゴ13」の原作も手がけた。七九年に「非合法員」で小説家としてデビューを果たした。主に辺境の地を舞台に、正史によって圧殺されていく、叛史の中で生きざるを得ない者たちの闘いを、骨太の筆致で描き続けた。
 南米三部作の一作目「山猫の夏」(八五年)で第六回吉川英治文学新人賞、同三作目の「伝説なき地」(八八年)で第四十二回日本推理作家協会賞、クルド人問題を扱った「砂のクロニクル」(九一年)で第五回山本周五郎賞、「虹の谷の五月」(〇〇年)で第百二十三回直木賞を受賞している。また日本冒険小説協会大賞も「蝦夷地別件」(九五年)などで、計六回受賞している。これは同賞の最多受賞記録である。
 今年二月には、〇七年より刊行が始まった「満州国演義」の最終刊「残夢の骸」を上梓し、全九巻に及ぶ長大なシリーズを完結させた。
 長年の功績により、三月に第十八回日本ミステリー文学大賞を受賞したばかりだった。