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1966年 第19回 日本推理作家協会賞

1966年 第19回 日本推理作家協会賞
受賞作

すいりしょうせつてんぼう

推理小説展望

受賞者:中島河太郎(なかじまかわたろう)

受賞の言葉

   受賞に際して

 今回の詮衡は意外な結果になってうろたえました。協会賞はまだ部門別をとっておらず、小説本位なので去年同様、刺身のつまと高をくくっていたからです。
 小説五篇の優劣がつけにくかったため、思いも寄らぬ好運に恵まれたのですが、その点推理小説界は私のささやかな仕事に、渝らぬ同情を寄せて下さっています。
 大衆文芸方面はこのほどはじめて尾崎秀樹氏が表彰されて意を強くしましたが、推理小説の方面では故江戸川乱歩先生をはじめ、書誌的研究的方面に好意をもたれる方々が多かったため、すでに昭和三十年にも私は受賞し、こんどまた重ねて光栄に浴しました。
 十一年前の江戸川賞は、授賞対象は「探偵小説辞典」となっておりますが、これは私のほうから願ったもので、実はそれまでの私の全業績に対する褒章でありました。こんどの受賞も「推理小説展望」その他の評論活動とありますように、その後十年間の仕事に対する褒美だろうと解釈しております。
 十年ごとに賞を戴くと、また欲が出て、これから先十年かかってまた一仕事しようかという気になります。私事になりますが、こんど長年勤めていた学校をやめ、女子大学に移りますので、専攻した国文学関係で心掛けたいものがあります。
 そうかといって推理小説とまったく縁が切れるわけでもありません。すくなくともやりかけた仕事をぼつぼつながら片付けてゆきたいと思います。私の小さな仕事にまで、絶えず温かい激励を送って下さる推理小説界に足を踏み入れて二十年、伝統ある賞を頂戴して、感慨が尽きません。暑く御礼申し上げます。 (三月卅一日)

作家略歴
1917~1999
鹿児島市生れ。東京大学卒。
都立墨田川高校教諭を経て、和洋女子大学教授。のちに学長。一九四七年、「日本推理小説略史」を「探偵新聞」に連載してから推理小説関係の評論・研究を手掛け、五五年、「探偵小説辞典」で第一回江戸川乱歩賞を受賞。さらに六六年、「推理小説展望」で日本推理作家協会賞を受賞した。著書に「推理小説ノート」「日本推理小説史」「日本推理小説辞典」など。八五年より二期四年、推理作家協会理事長を務める。
九七年、日本文学ミステリー資料館初代館長に就任。九八年、第二回日本ミステリー文学大賞を受賞。

選考

以下の選評では、候補となった作品の趣向を明かしている場合があります。
ご了承おきの上、ご覧下さい。

選考経過

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 選考経過

 本年度の協会賞の選考は、毎年選考委員を新たに選びなおすという内規に基き、まず先の理事会において、予選委員として石川喬司、黒部竜二、中島河太郎(以上協会側)大内茂男、権田萬治(以上協会外)の五氏。本選考委員として、松本理事長、島田一男、日影丈吉(以上協会側)荒正人、福永武彦(以上協会外)の五氏にそれぞれ委嘱した。
 次に例年通り、全会員にアンケートを出し、三十九年度中に発表された諸作品、評論、翻訳およびミステリーに関係のある映画、テレビ等も対象に、優秀作品の推薦を求めた。
 その集計を参考にして、去る二月三日、午後五時より講談社別館会議室において、予選委員会を開催。全予選委員が出席して、慎重に協議を行った結果、
 傷痕の街     生島治郎
 日本アパッチ族  小松左京
 恐 喝      佐賀 潜
 華麗なる醜聞   佐野 洋
 三重露出     都筑道夫
 虚無への供物   塔 晶夫
 日本推理小説史  中島河太郎
 夢魔の標的    星 新一
 以上の八篇を残し、更に討議を尽した末、左の四作品を候補作に選出。本選考委員会に送付することになった。

   候補作
 
 佐賀 潜 「恐喝」(光文社刊)
 佐野 洋 「華麗なる醜聞」(光文社刊)
 星 新一 「夢魔の標的」(早川書房刊)
 (以上作品)
 中島河太郎「日本推理小説史」(桃源社刊)
 (評論)

 書記局では、この候補作四篇を前記の選考委員五氏の許に届けて回読を乞い、引きつづき三月二十三日(午後六時)より、虎ノ門晩翠軒本館において、荒、福永、松本、島田、日影氏が、全選考委員出席のもとに、本選考委員会を開催した。
 席上福永武彦氏より、選考委員にも候補作提出の権限を与えてほしいという提案があり、次の理事会において審議することにし、直ちに選考に移った。
 まず、中島河太郎氏の「日本推理小説史」は、労作ではあるが、未完のため完結を待って、論議した方がいいのではないかという意見が多く、見送ることになり、また星新一氏の「夢魔の標的」も、氏の昨年度の作品としては、かならずしも秀れたものとはいえず、むしろ純粋なSF的作品の短篇の方にとるべきものがある、という理由で圏外に落ち、選考の対象は、佐賀氏の「恐喝」と佐野氏の「華麗なる醜聞」の二篇にしぼられた。
 その結果、佐賀氏の作品には、新しさと一気に読ませる面白さはあるが、推理小説としていま一歩の重厚さに欠けるという理由で、来年度を期待することにし、佐野氏の「華麗なる醜聞」には、これまでの作品から一歩進んだ斬新な試みがある点と、多年の作家的業績が加味されて、授賞が決定したものである。  (山村記)
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選評

松本清張選考経過を見る
 候補作としてとり上げられたなかでは、多岐川氏恭氏の「墓場への持参金」が最後まで残った。私も小説の中では、これがいちばんよかったと思う。いわゆる本格ものとして随分考えられている。火葬場での棺の入れかえなど、クロフツの「樽」を思い出したくらいだ。多数の火葬場係員のいる前でどうしてこのトリックが成功したか、最後まで気にかかって読みつづけた。しかし、結局、買収によって数十人の係員が犯罪に協力したと分ったときは、正直いって少なからず索然とした。共犯者(この場合は準共犯者とよぶべきか)が多いのは興味を減ずるのである。犯人はなるべく少いほうが、理想的にいえば単独犯行のほうが本格なのである。不可能事を可能にするところに真髄があるのだから、多数の協力者がいては減点となる。多岐川氏がよく工夫しただけに惜しい。
 しかし、不可能にみえる犯罪が単独、又は極く少数の人間で行われるトリックはまことにむづかしい。クロフツでも「マギル卿最後の旅」「材木小屋の秘密」などは、わんさと共犯者が出てくるのでがっかりさせられる。だが、この至難なことを考え出すことが、作者のよろこびである。
 小説に候補作が無いとすれば、中島河太郎氏の評論集「推理小説展望」が受賞対象となるのは当然である。小説と評論とをいっしょに審査するところに元来無理があるのだが、今回は中島氏の著作が小説を圧倒したのである。氏には去年の候補作「日本推理小説史(一)」があり、あるいはこのほうがすぐれているともいえるので、これまでの氏の立派な業績を含めて受賞対象にした。中島氏の少しもケレン味のない堅実で緻密な、広くよく行き届いた評論は、かたい樫の木をなでているような信頼感と説得力とをもっている。このような優れた評論家は当分は出現しそうにない。この機会に、あらためて敬意を表したい。
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南条範夫選考経過を見る
 残念ながら全般的に頗る低調である。小説の中には推薦該当作なし。中島氏の著作も、前年度候補に上がったものの方が力作だが、永年のジミな評論活動に報いる意味で推した。
 以下小説について短評を加える。但し、"エスパイ"は、推理小説の範疇に入らないと思うので、私はこれの選択の外に置いた。
 海への挑戦は不必要な説明文が多すぎるし文章に対する神経の使い方が足りない。影という人物も甚だ不自然に感じられた。
 墓場への持参金は何よりも、五十人買収という設定が全く非現実的である。人物の性格と行動が分離しているのも難点、多岐川氏の作品にはもっと優れたものがいくらでもあった筈、なぜこれを候補作としたか不可解。
 野望の猟犬はトリックが浅い。犯人は三分の一も読まぬ中に推察できた。へんな体操が一種の手旗信号だということも即座に分る筈。スミという女性は不必要な夾雑物だと思う。
 死者だけが血を流すはやや類型的な感じもするが、四篇の中では一番面白かった。もう少し人間が書き込まれていれば、一層優れた作品になったと思う。
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島田一男[ 会員名簿 ]選考経過を見る
 候補作品のうち長篇小説五篇はそれぞれの良さと味を持ってはいたが、協会賞を授賞するには、いささか力不足のように感じられた。何よりも気になったのは、なんとか社会性を持たせようとする強引なまでの努力が、結果的には設定の類型化を招いたことであった。たとへそれが、政治ボスと選挙運動員、業界新聞の先輩と後輩、地方実力者と新聞通信員など、登場人物に違いはあれ、結局――正直者が馬鹿を見る・・・と云う結末は、社会派推理小説として既に幾つかの作品が現れており、新鮮さを欠いていた。
 ただ、候補作五ツの中では、わたしは多岐川恭氏の"墓場への持参金"を推した。何よりも、とッつき安く、読み安く、面白く、文章に抵抗を感じさせない。筆力のある作家なればこそであろう。それにしても、思いきった大胆なトリックが、却って作品の力を弱める結果となったことは、まことに残念であった。
 小説に授賞作品がなく、中島河太郎氏の"推理小説展望"が審議され、これまでの評論活動と併せて授賞と全員賛成で決定した。
 ただ、この決定に当り、考えさせられたことがある。それは"推理小説展望"を審議中、各委員の口から、――中島氏のものとしては、昨年の"日本推理小説史"の方がよかったのではないか・・・との意見が出されたことである。その結果――その他の評論活動・・・と併せて授賞されることになったわけであるが、同じ言葉が、多岐川氏の場合にも委員の口から出ている。――多岐川氏は、もっとすぐれた作品を沢山書いている・・・。
 年度内の作品についてのみ審議する性質上やむを得ないことかもしれないが、――前にはもっとよい作品があった・・・とか、或は――むしろ今後に期待した方がよいのではないか・・・と授賞を見送られているうちに幾年かたち、――いまさらあの作家に授賞するなんて・・・ということになりかねない。このような運不運は、あらゆる授賞の宿命だ・・・といった友人がいる。しかし、運不運でかたずけられてはたまらない。なんとか、適切な方法はないものであろうか。
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日影丈吉[ 会員名簿 ]選考経過を見る
 読んだ順にいうと、三好徹「野望の猟犬」は、努力作で好感が持てた。密室の中でも最もラジカルな、時間差のトリックを扱ったのはお手柄だが、ラジオ番組の利用は無理。作者は掛川という重要人物を、ちょっと持てあましたらしいが、彼の死が他殺と見られるという程度の書き方は、普通の小説ならかまわないとしても、推理小説ではこまる。現実の政治家らしいのを査問会に登場させるなど意欲的で面白いが、推理小説の構造上の力点がぐらついているのが授賞には弱かった。だが、こういう努力は今後も続けてもらいたい。
 生島治郎「死者だけが血を流す」、総体に達者に書けていて、副主人公進藤の若い妻や選挙参謀などの脇役もうまい。大衆物の腕を見せた作品だが、この作者には、もっと新鮮味を期待したかった。
 邦光史郎「海の挑戦」は、構想、素材、構成等いちばんの力作で、ぎらぎらして賑やかで、いちばん面白かったから、ぼくは一応、これを推薦した。だが、中島君を除いた別の委員の評価が、ひどくわるすぎたため、問題にならなかった。以上の三作は犯人ないし主謀者の設定がどれも同じようで、社会悪を相手どると、こういうことになるという実例をしめされたような感じ。
 多岐川恭「墓場への持参金」は、さすがにベテランらしく、いちばんソフトな出来で、委員の評価もよかったようだ。ぼくの採点は多岐川君に対して、特に辛かったかも知れない。ぼくはこの作品を読んで、本格物を書くにはどんな種類の情熱が必要なのか、あらためて考えさせられた。こういう一見おもしろいアイデアには、作者のための陥穽が匿されている。すぐに底が割れてしまうから、別の説得力が要求されるのである。しかし慣れないことをやろうとした努力は大いに買える。
 小松左京「エスパイ」、去年の星君のものが予選を通過した理由はわかるが、この作品の場合は理解しにくい。小松君はぼくの期待する作家だけに、これがとりあげられたことがうなずけない。
 以上、推理小説四点、例年よりできがわるいという委員会の評判だったが、ぼくはそうは思わなかった。ただ面白いことに、どれも現代の犯罪には金がかかる、ということをいっているようだ。「金のない奴ぁ、わるいこと、するな」と植木節になりそうである。それで、金にはあまり縁のなさそうな、ぼそぼそした中島君の著作の授賞に賛成した――というわけでもない。
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中島河太郎[ 会員名簿 ]選考経過を見る
 本年ははじめて映画が候補作に選ばれた。授賞の対象を小説だけに限らなくなったのは、協会活動の趣旨に添っているわけだが、詮衡委員の誰もが、肝腎の「日本列島」を観ていなかったし、またそのほうの審査まで適任かどうか危ぶまれる。
 映画賞を出すとなると、その詮衡方法は別に考慮しなくてはならぬので、今回は見送ることに同意した。
 作品五篇のうち、「エスパイ」はSFの分野でも推理的興味のあるほうだが、「透明受胎」に見られる積極的な結びつけを狙ったものでもない。のびのびとしたタッチに惹きつけられたが、それは推理小説の本質と異質のものであった。
 生島氏も邦光氏も、ここに挙げられた候補作に限ることなく、独自の作風を築こうとしている。当該作品を含むなら充分に表彰に値する。
 本格物の「墓場への持参金」と「野望の猟犬」は、それぞれすぐれた持味で娯しませるが、犯罪工作に一長一短があった。
 とび抜けて人目を惹くものはなかった代りに、各作家の洗練された表現力の点からは、甲乙がつけにくかった。
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角田喜久雄[ 会員名簿 ]選考経過を見る
 江戸川乱歩賞というものを創立したいということが発表されたのは、昭和二十九年秋の、乱歩さんの還暦祝賀会の席上であったが、それより前、その年の五、六月頃だったと思うが、乱歩さんから、そのことについて内々相談があった。
 乱歩さんとしては、すでにクラブ賞というものがある上に、自分の名前を冠せた賞である以上、それだけの価値のあるものにならないと困るが――と、それを気にしての相談であったが、色々話しているうちに、結局最初の受賞者を誰にするかで賞の性格がきまってしまう、それが一番大事だということになり、君は誰を推薦するかと聞くので、中島河太郎君の名前をあげると、実は僕もそう思っていたと、二人の意見が一致した。
 当時は、戦後の所謂第一期新人につづいて、有力な新人群が輩出し、一応小さいながらブームのようなものが起ったあとであったが、しかし、広い視野から見れば、まだまだ局地的なものであって、いわば戦前からあった土壌の上に新しい芽が生え、花が咲きかかったという性格のもので、特に著しい、戦前にはなかったという程特異なものは見られなかった。
 そういう中で、唯一つ、中島さんの出現だけは、刮目すべきものだったといえる。以前から、推理小説の研究とか評論とかいうものはあったが、殆んどが熱心なアマチュアの余技であったり、片手間の断片的なものであって、中島さんのように専門家的な周到な用意の上に、専心打込んで尨大な仕事と取組む人は、戦後はじめて出現したもので、まことに貴重な存在であるということで、乱歩さんと私の意見が全く一致したわけである。
 そういう考えは、乱歩賞の選考委員の方達も同じであったらしく、昭和三十年の第一回乱歩賞は中島さんに授賞されたのだが、その授賞式のあと、三次会だったか四次会だったか、上機嫌に酔った乱歩さんが、中島君のような地味な仕事をする人のためにも、この授賞はよかったが、乱歩賞それ自身のためにも非常によかったと述懐したことであった。
 その後の中島さんは、われわれの期待にそむかず、黙々とエネルギッシュに推理小説関係の研究評論をつづけ、沢山の属目すべき業績を残され、今度は推理作家協会賞を受けたわけだが、むしろ当然のこととはいいながら、洵にお目出度い。もし、乱歩さんが生きておられたら、一番喜ばれたことだろうと思う。
 中島さんは他のジャンル――例えば、児正宗白鳥研究などにも深い関心と研究成果をもっておられるようだが、推理小説界のためにも、是非とも一層の御労作をお願いしたいと思っている。
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山村正夫[ 会員名簿 ]選考経過を見る
 評論の仕事は創作にくらべると、地味だし報われることもきわめて少い。
 殊に日本の推理小説界はまだ土壌が浅いだけに、どうしても作品優先主義になりがちで、評論を軽視する傾向なきにしもあらずの感がある。そうした風潮の中で、このジャンルの仕事に打ち込むということは、推理小説に対してのよほどの情熱の持ち主でなければ、とてもできることではない。乱歩先生が亡った後、そういった意味の真の鬼は、寥々たるものになってしまった。
 中島さんはその真の鬼の一人で、推理小説畑の生んだ唯一の専門評論家として、今日まで多忙な教職のかたわら、黙々と縁の下の力持をつづけてこられた。
 その蔭の労ともいうべき多年の業績については、推理作家自身が誰よりも一番よく知っているはずである。授賞式の席上で松本理事長もいわれたように、推理作家の中で大なり小なり中島さんの恩恵を蒙らなかった者は、皆無といってもいいだろう。
 その中島さんの労作『推理小説展望』を含む過去の評論活動に対して、今年度の栄ある協会賞が授与された。第一回の乱歩賞では、乱歩先生がいち早く中島さんの真価を認められたが、今度は協会としてこれまでの中島さんの業績に報いたわけである。
 暮の一ヶ月間、高校の激職を一日も疎かにされずに、徹夜につぐ徹夜で八百枚の原稿を完成された苦労を身近に知っているだけに、親しい後輩の一人として、私もこんなに欣ばしいことはないと思う。
 今後はこれがきっかけとなり、中島さんの後に続いて、評論を志す者もどしどし出てくることだろうし、またそうあってほしいものである。
 ところで蔭の労といえば、協会賞の授賞式には、受賞者が夫人同伴で出席することが、近年の慣例になっている。昨年度の佐野洋氏の受賞のときもそうで、毎年会の進行に当る私にとっては、それぞれに深い感銘が記憶に残っているが、今年は特に式の終りに松本理事長がわざわざ立って、中島夫人に拍手を送られた。中島さんの蔭の業績の、そのまた内助の功に対してのねぎらいである。
 日ごろ中島さんとは、協会運営の業務の打ち合わせなどで顔を合わせ過ぎているせいか、なかなかお祝いの実感が湧かなかったが、人生の最良のときをしみじみと味わっておられるつつましやかな中島夫人に向って、参会者ともども拍手を送っているうちに、私は心の底から欣びの共感がこみあげてくるのを覚えた。ほんとうによかったと思った。
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選考委員

予選委員

候補作

[ 候補 ]第19回 日本推理作家協会賞   
『墓場への持参金』 多岐川恭
[ 候補 ]第19回 日本推理作家協会賞   
『海の挑戦』 邦光史郎
[ 候補 ]第19回 日本推理作家協会賞   
『死者だけが血を流す』 生島治郎
[ 候補 ]第19回 日本推理作家協会賞   
『野望の猟犬』 三好徹
[ 候補 ]第19回 日本推理作家協会賞   
『エスパイ』 小松左京
[ 候補 ]第19回 日本推理作家協会賞   
『日活映画 日本列島』 熊井啓