新入会員紹介

入会のご挨拶

中嶋淑人

 この度、日本推理作家協会に入会させていただきました、中嶋淑人と申します。
 この場をお借りして自己紹介を簡単にさせていただきます。
 私自身は作家ではありませんが、父は中島河太郎という推理小説評論家で、こちらの日本推理作家協会の第七代目理事長も務めておりました。生誕百周年には間に合いませんでしたが、一昨年と昨年にかけて論創社より「中島河太郎著作集」上下巻を上梓することが出来ました。
 新入会員としては、もしかすると最年長かも知れません。父からは「お前が入る様な所ではない」と言われるのか、「やっと少しこちらの世界に近寄って来たな」と喜んで貰えるのか、甚だ微妙です。
 先の「中島河太郎著作集」を編むにあたって、父は蔵書や手紙類及び作品や新聞等のコピーなどを全て処分せずに残していましたのでその整理が大変でした。
 特に手紙の場合には知らない名前の方はネット検索をして調べています。ファンの方からの手紙も保存していますので、その後に違う方面で活躍なさっている方もいらっしゃいます。推理小説を子供の頃から読まれる方は頭が良い読者が多いように思いました。勿論本協会員の方々からのお手紙も多数あります。
 プロデビューなさる前には本名でお出しになっているので見落とさない様に気を付けています。例えば中川透・鮎川哲也、松下幸徳・佐賀潜、中井英夫・塔昌夫様達です。
 昭和三十年代には実家に作家の方々がお見えになりました。当時は狭い家でしたので一階の四畳半の居間に来られたので子供だった私も横に座っていることがありました。私が印象に残っている中では一番多く来られたのは大河内常平さんで、大きな身体を屈めるようにして居間に座っていらっしゃいました。
 ご子息と一緒に海水浴に行ったこともありました。他に記憶しているは楠田匡介さんで何故かいつも傍に座らせて私の耳たぶを触っておられました。
 皆さんからは子供向けの本もたくさん戴きました。NHKで「事件記者」を放映しているころには、島田一男さんから多く頂戴して読んでいました。香山滋さんからは「ゴジラ」をサイン入りで頂戴して表紙はボロボロになりましたが大事に所有しております。
 父が本を蒐集しているので倣ったのか私も子供の頃から読んだ本を処分したことが殆どありません。ちなみに「週刊少年サンデー」、「週刊少年マガジン」は昭和三十四年創刊から十年分書庫に保存しています。
 生まれた頃から探偵小説、推理小説に埋もれて育ちました。幼い頃の記憶にあるのは、月曜書房の背表紙が紅白のシャーロックホームズ全集や東京創元社のエラリー・クイーン作品集の世界の地名シリーズ等の全集物と雑誌の「宝石」、何故かクロフツの「樽」が残っています。
 その他にも当時は読み方も判りませんでしたが、南方熊楠の全集を覚えています。
 先の著作集を編むに当たって、父の蔵書を多少整理したのですが、内訳として推理小説関係、柳田国男をはじめとする民俗学及び正宗白鳥関係等の国文学の書籍が約六万冊程あります。
 殆どの本はトランクルームに収蔵しているのですが、足の踏み場もなかった書庫にある普通の週刊誌などは目次を見て何のために残しているのか一冊ずつチェックをしています。
 特に困るのは民俗学関係などの方の記事が載っているような場合です。これは手紙などにも言えることですが。
 最後になりましたが、
 この度、地元の墨田区のひきふね図書館に於いて「中島河太郎の足跡をたどる」という展示会を開催されることとなりました。この為に整理をしていた事もあり、自己紹介が遅れた事をお詫びいたします。
 期間は五月二十日から六月三十日までですので、間に合えばお寄りいただければと思っております。
 今後とも宜しくお願い致します。