新入会員紹介

入会のご挨拶

桃春花

 日本推理作家協会の皆様に、はじめてご挨拶申し上げます。このたび末席に加えていただくことになりました桃春花と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 入会申請にあたりましてお力添えをいただきました、佐藤青南先生と知念実希人先生のご両名様に、この場をお借りしましてお礼を申し上げます。ありがとうございました。
 と、これでお伝えしたいことは終わってしまうわけですが、さすがに短すぎますでしょうか。しかしミステリー作家として活躍されている先生方や、日本を代表するお歴々の前で、いったいなにを申し上げればよいのやら。無名作家の自分語りよりも猫の話でもした方が楽しんでいただけるのでは。うちの子語りならなんぼでもいけまっせ、とキーを打つ手が暴走しそうですが、世の中には犬派もいれば鳥派やハムスター派もいますから、ここはやはり真面目なお話にいたしましょう。ちなみにうちの裏庭、モリアオガエルが生息しています。
 推理作家協会という団体に加入させていただきながら、じつのところ私はミステリーを書いたことがありません。事件が起きて活劇がくり広げられる物語が大好き、自身の作風もそういう傾向ですが、サスペンスはあっても本格推理にはいたりません。ドキドキしながら謎を追い、すべてが解き明かされた時、爽快なカタルシスをあじわえる―そんな物語を書けたらどれほど気持ちよいでしょうか。憧れます。大いに憧れます。しかし書けません。なぜならば、私は致命的なまでにプロット作業が苦手だからです。
 創作歴だけは長いものの、ずっと自己満足の一人遊びをしていました。小説投稿サイトの存在を知ってからも、自分が好きに書いたものを誰かが気に入ってくれたらうれしいというスタンスで、相変わらず自己満足で終わっておりました。
 それがたまたま時流に乗れたことで商業デビューできましたが、そうなると自己満足では通りません。まずきちんとプロットを作るところからはじめなければいけない。苦手だからとこれまで目を背けてきたことに、向き合わなければいけなくなったのです。
 なにごとも練習してきてこそよい結果を出せるわけで、これまで一度もプロットを作ったことのない人間にまともなものを作れるわけがありません。はじめは本当にざっくりした、枝葉もない幹だけみたいなものしか作れませんでした(あれでよく編集会議を通ったものです。担当様スミマセン)。先日は過去最高に頑張ってけっこうしっかりしたものを作ったつもりだったのですが、ちょうどSNSでプロットが話題になり、公開されている作家様のを拝見しますと……全然違いました。
 どうして本文を書きはじめる前にあんなに細かく展開や台詞まで決められるの!? そりゃ大筋は決まってるけど、細かいところなんて物語を追っていかなきゃ見えないじゃない。なんでスタート地点からゴールまで見通せるわけ!? 途中で売ってるシイタケが菌床栽培なのか原木栽培なのか、国産なのか輸入なのかまで判別できるわけ!?
 ―ミステリーというものは緻密な設計の上に成り立つ物語ですから、これができなければお話になりませんよね。そしてシイタケと思わせてじつはツキヨタケだった、というところまで見抜くのが推理作家なのでしょう。
 はたして私はそこまでのレベルに至れるのだろうか。それ以前にいつまでお仕事をいただけるだろうかという話ですが、負けん気だけは人並みにあるものですから、いつかミステリーを書いて読者さんを驚かせたいと憧れているのです。ふわっとした話かと思ったらしっかりミステリーだった―そんな作品を世に送り出せる日を夢見つつ、今はまだプロットと格闘中です。
 こうして協会に加えていただき、会報なども読めるようになりました。諸先生方のご活躍、お言葉を参考にさせていただきながら、精進してまいりたく存じます。
 あらためまして、ありがとうございました。