訃報

会員・三好徹氏

 会員の三好徹(本名・河上雄三)氏が、四月三日誤嚥性肺炎のため亡くなられた。九十歳。三好氏は一九三一年東京生まれ。横浜国立大学経済学部卒。五〇年に読売新聞社に入社。六六年に退社し専業作家になった。
 五九年に三好漠名義の「遠い声」で第八回文學界新人賞次席に。同僚の佐野洋の影響もあり推理小説も手がけるようになった。六〇年に政党総裁選をめぐる陰謀を描いた初の著作「光と影」が刊行された。
 キューバ動乱を描いたスパイ小説「風は故郷に向う」(六三年)を皮切りに、中近東を舞台にした「風に消えた男」(六五年)、ジャカルタで日本人特派員が事件に巻き込まれる「風塵地帯」(六六年)、泥沼化したベトナム戦争下のサイゴンを描いた「風葬戦戦」(六七年)を発表。これらの作品は〈風の四部作〉と呼ばれ、三作目の「風塵地帯」で第二十回日本推理作家協会賞を受賞。さらに少年犯罪を描いた六七年発表の「聖少女」で第五十八回直木賞を受賞した。
 六八年から連載が始まった警察回りの記者を主人公にした「天使」シリーズ、捜査小説の一面もある「特捜検事」(七八年)に始まる特捜検事シリーズ、「コンピュータの身代金」(八一年)に代表されるコンゲーム小説である〈身代金〉シリーズ、「チェ・ゲバラ伝」(七一年)などの伝記小説、「興亡三国志」(九七年)などの歴史小説、「小説投機」(七八年)などの経済小説がある。
 趣味の囲碁は文壇名人を獲得するほどの腕前で、囲碁棋士の評伝「五人の棋士」(七五年)が、もう一つの趣味ゴルフに関しても「文壇ゴルフ覚え書」(二〇〇八年)などがある。
 社会派ミステリー、冒険小説も含め、幅広いジャンルで活躍をみせた。