ハガキ随想

”3センチ先”

長谷川卓也

 危うく私の命が助かったこと、逆に他人の命を私が助けたことが各2回。まさに人生3センチ先はブラック&ホワイトですね。
 昭和20年9月に繰り上げ卒業で戦場へ、のはずが8・15敗戦。たった1ヶ月の差で命拾い。被占領下に書いた特ダネ新聞記事にGHQが占領目的違反容疑。軍事裁判は免れたものの、あの時代は何が起ころうと――。
 知人宅の新聞受に不審を抱き、孤独死寸前を発見して119番。もうひとつは、過労続きから自死を考えていた友人が私に悩みを相談、思いとどまったと、これは後年私に打ち明けた。
 かく申す私、亡母の話によれば難産で、医者から宣告されたほど。しかも鉗子が目のそば。虚弱児童を経てガンを5ヶ所も、だったのに卒寿を越えたとは――。