ソフトボール

推理作家協会ソフトボール報告記

熊谷千寿

 8月19日、ぼくが50日前に終わった試合の報告記を今ごろ書く気になったのは、夏の高校野球のおかげです(いつも原稿が遅くてすみません)。ベスト8 をかけた仙台育英 vs 大阪桐蔭の試合を観てしまったからです。9 回裏、1 点を追う仙台育英が二死ランナーなしからヒット、盗塁、四球、エラー、ヒットで、春の選抜大会優勝校を相手に奇跡の逆転勝利を収めたとき、ぼくの脳裏に50日前のソフトボールの試合が鮮やかに浮かび上がってきたのです。

 6月29日 木曜日、まだ肌寒いくらいの気仙沼から出てきたせいか、青山の野球場はとても蒸し暑く感じました。
 第一試合、ミステリーズは手のけがが完治していないエディターズ・エース、集英社の山田さんを打ち込み、9対4でさくっと快勝したものの、第二試合には、先攻のミステリーズはエディターズのローテーション・ピッチャー、徳間書店の高田さんを打ちあぐね、最終7回表二死の時点で5対9と絶体絶命のピンチでした。ランナーなし。バッターは12番(打者数は参加人数により増減します)の伊多波さん。ここから4点差をひっくり返すのは、さすがに無理っしょという心の声が聞こえてきます。
 しか~し、伊多波さんが執念のヒット! 伊多波さんに引っ張られて、1番小沢さん、2番柳さんもきます。さすが数々の修羅場をくぐり抜けてきたお二方。3番の逢坂さんも当たり前のようにヒットを放ち、3点差。次はぼく……胃が痛い。ネクストバッターズ・サークルの伊東さんの太い腕が、 "オレまで回せ" と訴えかけているような気がしました。びくついてバットを振ったのがよかったのか、センター・オーバーのヒットでつなげられました。
 これで1点差。さっきのビビリぶりなどすべて忘れて塁上から声援を送ると、伊東さんのクリーン・ヒットで逆転! 次打者の河野さんも続き、なんと二死ランナーなしから打者7人の猛攻で6得点の大爆発です!
 最終7回裏をピッチャー河野さんがきれいに締めて、ゲームセット! ミステリーズは11対9で逆転勝利を収めたのでした。

 実はこのドラマにはおもしろい伏線がありました。5回裏、エディターズが二死から長短打を連ねて2点を奪取し、さらに双葉社の山上さんがレフト線へタイムリー・ヒット。ミステリーズ三塁手の逢坂さんがレフトからの返球に気付かず、ボールが点々と転がる隙に駄目押しの追加点が入るかと思われたとき、主審のスリーアウト・チェンジのコールが響き渡ります。ランナーの徳間書店の野間さんがミステリーズ三塁手の逢坂さんに話しかけた行為が、守備妨害と見なされたのでした。世の中、何が起こるかわかりません。

 激戦後は敵味方入り乱れ、森のビアガーデンでぱ~っと暑気払いしたはずですが、ぼくはひとり高田馬場に向かい、翻訳者仲間のライブを観てきました。こちらもアツかった! 最高の一日でした。

 10月22、23日に予定されているソフトボール合宿では、もっと感動的なドラマが待っていることでしょう。