ハガキ随想

食べながら読んではいけない話

鳴海風

 定年退職して二年近くが経過した今ごろになって、厄介なお尻の病気とおさらばするべく手術を受けた。作家業に本腰を入れるための戦略的行動ではない。長年の悪友みたいな病気だったので、一生の付き合いを覚悟していた。それが、とっても話しやすい医師との巡り会いがあって、今回の決断となったのだ。
 実は、年々存在感が大きくなってきた宿敵(前立腺)とも、かつて手術で縁を切っていた。そのときも、主治医が美しい女医さんからベテランの男性医に交代したことが、その決断を促した。
 話はもどって、私のお尻の手術はにぎやかなことになった。当初予定していたのは硬化療法とわずかな切除一ヶ所だったが、切除は二ヶ所に増え、さらに糸でしばる方法も組み合わされた。病室を出て一時間半後に戻ってきたときは、私の患部はお祭り騒ぎになっていた。
 退院して十日が過ぎた現在も、過激な運動、激辛の食べ物とアルコールが厳禁で、出血が止まるまで入浴はできずシャワーだけである。情けないことに、日本男子が、こんな年齢になって、ナプキンをあてている(涙)。
 そして、それだけではない。悪女のような五十肩が三度目の反乱を起こし、抹殺したはずの足の爪の白癬菌までがゾンビのようによみがえってきたのだ。人生同様、私は、様々な魔物(病気ほか)に魅入られているのかもしれない。