ソフトボール

ソフトボール合宿報告

伊多波碧

 負けるが勝ち、ということわざがある。
 2015年11月3日、推理作家協会のソフトボール合宿が開催された。今、報告レポートを書きながら、わたしはその意味を考えている。

 合宿の開催場所は昨年と同じく、修善寺。秋の陽の射すグラウンドで、ミステリーズ対エディターズの試合は幕を開けた。
 先攻はミステリーズ。初回からエディターズに3点を取られたものの、次の回には3点を返し、4回が終わったときには8対6でリード。そのまま迎えた最終回でもさらに2点を加え、点差を4点まで広げた。
 とはいえ、まだエディターズの攻撃がある。最後まで油断せず、気を引き締めていこう。試合は終わるまで何があるかわからないと言うから。おまけにエディターズは若い。平成生まれが5人もいる。
 そういう予感は当たるもので、ミステリーズは逆転された。飛鳥選手(集英社)がホームランを打ったのだ。最終回に5点入れられ、第1試合はエディターズの勝利。まあ、次の試合もある。ミステリーズに焦りはなかった。
 が、続く第2、第3試合もエディターズの勝利。合宿初日は悔しい結果に終わった。
 翌二日目。
 グラウンドへ行くとエディターズの人数が減っている。二日目は平日で、編集者の選手が数名、東京へ帰ったのだ。ミステリーズからも延澤選手が離脱したが、他は全員残っている。今日は勝てる。人数でいえば、ミステリーズのほうがずっと多いのだ。
 昨夜の酒の残る体をストレッチでほぐし、二日目の試合がスタート。
 ミステリーズの選手たちは元気がよかった。みんな合宿を何度も経験しており、二日酔いでのソフトボールに慣れている。
 ミステリーズは1回表でベテラン小沢選手、逢坂選手、河野選手がそれぞれ得点し3点先取。裏でエディターズの金森選手(中央公論新社)、野間選手(徳間書店)に2点、3回で山上選手(双葉社)、高田選手(徳間書店)、中谷選手(講談社)に3点返され、逆転を許しながらも、5回で小沢選手、逢坂選手が2点返して追いつく好ゲーム。その後、6回に中谷選手(講談社)、笹川選手(文藝春秋)が得点し、ミステリーズは2点差をつけられた形で最終回を迎えた。後がない。ここで追いつかないと試合終了だ。
 打順は1番から。吉野選手が期待に応えて1点、さらに河野選手が1点を入れ、2点差は解消。いい流れだ。わたしはミステリーズの勝利を確信した。
 が、甘かった。最終回裏で野間選手(徳間書店)がとどめの1点を入れ、エディターズが逆転したのである。まあ、ここまでは練習試合だから。逢坂選手の声を力に第2試合に臨むも、何と10対0で大敗。合宿はミステリーズの全戦全敗で幕を閉じた。
 というわけで、冒頭のことわざに戻る。
 負け惜しみを言うのではない。負けても勝っても楽しい合宿。両チーム頑張りました。来シーズンもよろしくお願いします。