新入会員紹介

ご挨拶にかえて

中西真雄美

 はじめまして。このたび当協会に入会させていただくことになりました、中西真雄美と申します。翻訳の仕事をしております。どうぞよろしくお願い致します。
 ご推薦いただきました新保博久・伏見威蕃両先生に、この場を借りまして心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。

 翻訳の仕事を専業でやりはじめるようになって、はや十年以上が過ぎました。パソコンと向きあってばかりの毎日ですが、いまでも自分は「書く仕事」をしていると思っていて、それを言い訳に自分に許してしまっているのが、ペンの収集。私の脇机には八個のペンスタンドが並び、その中に安い物からそこそこ分不相応な物まで何十本もの(いや、数えたことないので、ひょっとしたら三桁かも)シャーペン、ボールペン、万年筆たちがひしめきあっていて、そこだけ見れば、家のなかにいったい何人の物書きがいるんだ、といったありさまです。
 実情はというと、一般の事務職の人たちより書く仕事なんてずっと少ない職業ですから、当然なかなか出番のまわってこないコも多く、ほとんど休眠状態のものも少なくありません。活躍しているのは、せいぜいメモ書きに使う安物のシャーペンと、原稿の推敲やゲラの校正に使うこちらも数百円程度の赤ボールペンぐらい。それが、ほとんど唯一といっていい書く作業なのでしかたがないとはいえ、長らく待機状態にいるン万円のボールペンを横目に数百円組ばかりを手に取っていると、ちょっとした罪悪感すら感じます。
 ペンスタンドだけではありません。少し高級なペンを入れるためのペンケースも七、八個、なかなか外へ連れ出してもらえないまま、引き出しのなかで眠っています。打ち合わせなんて年に一、二度あればいいところ、そもそもほとんど外に出る機会もなく、ちょっとした引きこもり状態の日々を送る私にとって、外出先で上質なペンを取り出す憧れの姿はもはや妄想の世界です。
 もともと文房具好きだった私は、新手のものを見つけるとついつい買ってしまい、ボールペンやはさみのように比較的よく使うもののみならず、電卓やセロテープ台、ホッチキスといったものまで、仕事部屋だけでなく、ダイニングにも寝室にも一つずつ置いてあるしまつ。そうそう、スマホを置く台も各部屋にちゃんと用意されています(そのくせ、バッグにつっこんだままということも多いのですが)。年を重ねるごとにその関心は筆記具に集中するようになり、いまやひとりではとうてい使い切れないペンたちに、ただでさえ物の多い机まわりをより窮屈にされてしまっています。
 それでも、つぎに筆記具売り場に立ち寄ったら、推理作家協会に入会させていただいた記念にと、性懲りもなくまた新しいコを連れて帰ってくるかもしれません。