近況

明野照葉

明野照葉

 気づいたら、違う町の別の部屋で暮らしていた。……と言ったら、「これだから物書きは」と、顰蹙を買うだろうか。でも、自身の感覚からすると、まさにそんな感じなのだ。
 かねがね引っ越したいと思っていた。が、「今住んでいるこの町で」というのが私の大前提だった。その部屋探しも体調を崩して頓挫。そんな折、頼んでいた人から物件の案内が届いたが、大前提をはずしていたこともあってスルー。しかし、「この物件は見ておいた方が」と迎えの車が来て、朦朧たる状態で見に行った。そうしたところ、妙にしっくりきてその日のうちに申込書を入れ、3日後には契約書にサインしていた。そうなれば、もう引っ越すしかない。
 怒濤の片づけ……我を取り戻した時にはもう引っ越していた。
 今は住めば都の途上にある─そんな感じだ。