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前にもふれたが、推理小説の評論やエッセーに「この後、犯人と内容について言及します!」といった警告が入ることがある。私が最初にこの手の警告文を見かけたのはS教授の評論だったと思うが、彼が始祖なのか、教授自身はどうお考えか。
ときどき、犯人やらトリックやら全部バラしたエッセーを書く。あなたがファンなら、この傑作は、先刻、御承知でしょうからという判断で書くのだが、あそこまでバラしてしまうのはと、顔をしかめる編集長もおられる。他方、読者からは、一度お賞めの言葉を戴いたものの、バラすのはけしからんと非難されたことはない。もっとも、非難が来ないのは、読者には筆まめの人は少ないし、それに読んだ作品の筋を忘れてしまっている人が結構多いからだ。だから、今更バラしたところで、そんな筋だったっけ、そう言えば変なトリックだったな程度ですんでしまうようだ。
推理小説の紹介や評論を中心としたアメリカの雑誌に面白い記事があった。
作家Aの第一作が好評で、第二作の発表の前にテレビのインタビューに出ることになった。友人の作家Bにその話をしたら、Bは「あのテレビは気をつけろ。僕はインタビューの途中で、席を立って帰って来たよ」という。Bは、特に怒りっぽい男ではないのだが、録画中に司会者が「あなたの小説の犯人のジョニーが……」と名前をバラしてしまい、それを放映されたくなかったので、席を立ったのだとか。Bは自分が中座することで、番組そのものをつぶし、犯人の名が放映されるのをくいとめたわけである。
で、第二作発表直前の作家Aがインタビューに出る。新作について語ってくれと言われて、予め考えておいたとおり、漠然としているが興味をそそるような説明をしたら、司会者が「しかし、その人物は、確か、第一作で犯人だった男でしょ」と言ってしまったという。
Aも席を立って会見を中絶させたのか、その記事には載っていなかった。司会者の犯人守秘ルールに対する無神経さは相当なものだが、その作家の作品をちゃんと読んで、質問を準備していたのは評価すべきだろう。なかには、生い立ち、執筆の動機、気に入った映画化作品、抱負といった項目をマニュアル通りに質問するだけのインタビューもある。
途中で帰ってしまったBは勇敢だったが、純文芸の作家にも勇敢な男がいた。全米的に人気のあるトーク・ショウの女性司会者が番組の中で新作を挙げて批評すると、その本の売上げが急増する。二〇〇一年に全米図書協会賞を受賞したJ・フランゼンは、彼の作品がトーク・ショウの推薦図書になったとき、私の小説は芸術作品なのであなたの番組の視聴者向きではありませんと言った意味の発言をして、ショーへの出演は取りやめになった。それでも六十八万部売れたそうである。
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