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このたび入会許可をいただきました久綱さざれと申します。デビューから三年目、実績はハードカバー二冊のみという若輩者ですが、どうぞよろしくお願いいたします。
実を申せば、こちらからお願いして末席に加えていただいたのにも関わらず、こうしてご挨拶文を書いていても、未だ、晴れて会員になれたのだという実感が沸いてきません。長年培ってきた日本推理作家協会や江戸川乱歩賞、協会賞への憧れが強すぎるせい、もしくは自分の筆歴があまりにみすぼらしいせいでしょう。同じようなことは、デビューのきっかけとなった授賞式会場でも感じておりました。
学習研究社の「第一回ムー伝奇ノベル大賞」最優秀賞をいただいたのですが、応募作『ダブル』は初めて書いた長編小説でした。自分から応募したのですから、もちろんデビューしたいと望んでいましたし、その証拠に家族へも「三年間だけ頑張ってみて、それで芽が出なかったら諦める」と約束もしていました。しかし内心では、九割方以上「やっぱりダメだったよ」と苦笑いする三年後の自分を予想していたのです。それだけに受賞の報には喜びよりもまず驚きが先立ち、華やかなパーティ会場でも、どこか居たたまれない気まずさを味わっていたように覚えています。今回の入会に際しても、会員証と共に送られてきた会員名鑑の錚々たる顔ぶれを拝見するにつけ、なんとも無謀なお願いをしたものよ、と今更ながら冷や汗を垂らしている次第です。
もっとも、この居たたまれなさの感じは、私にとってすでに馴染みのものでもあります。
高校では、女生徒の多い文系クラスでやっていける自信がないばかりに理系を選択したものの、次第に難度を増していく数式に音を上げてしまい、結局進学は文学部を志望しました。が、今度はそのため、受検末期の土壇場となってから文系クラスの中に混じって授業を受けさせられるという、ひどくみっともない羽目に……。ようやく入れた大学では、一番面白いと感じた西洋哲学を専攻しました。が、専門に入ったとたん、もともと語学が苦手だったことを痛烈に思い知らされました。当然、院へ進む意欲も玉砕し、就職。これからはコンピューターの時代サ、とそちら関係で勤務を始めましたが、数年が過ぎる頃には宮仕えもつらくなってしまいました。
要するに、なにをするのも中途半端で、どこにいても肩身が狭いのです。現在は結婚していますが、家庭の中でも居心地の悪さを日々実感しています。たぶん、稼ぎが少ない割に家事育児も十分していないという後ろめたさのせいでしょう。ああ、どうかこの文章を家族が目にすることのありませんように!
自分の居場所はどこ? などと言って多少なりとも周囲から耳を貸してもらえるのはせいぜい二〇代前半まで、と思っています。最近では、この世は居心地の悪いもの、と開き直れるようになりました。とはいえ、それで気分が楽になるわけでもないのですが。
しかしそんな私にも唯一、リラックスできる居場所があります。自分の考える物語の中です。だからこそ私は、中毒患者のように物語を求めずにはいられないのです。――と書くと、少しは格好良く見えるでしょうか。実際は、水が低きに流れるように、ただ楽できる場所へと意識を移動しているだけです。しかしそれを出版してくれる社があり、時間を割いて読んでくれる編集者、読者がいるというのは、実にありがたく幸せなことです。また、デビューしてからは、あまり体裁が良いともいえない中途半端な回り道の数々も、いつか小説の題材になるかもしれないから、と自分や周囲に言い訳できるようになりました。これもありがたいですね。
デビューしてから、私の作風はミステリーとホラー、両方の要素があると言われました。謎解きの面白さは今後も追求していきたいと思っていますが、きっとそのあたりが、今回幸いにも入会を許されたことへ結びついたのでしょう。自分の力量を思えば場違いな気まずさは相変わらずですが、できるだけ長く書き続けていきたい、そのために精進を重ねてゆく所存です、という現在の偽らざる心境をお伝えして、皆さまへのご挨拶、及び自己紹介と代えさせていただきます。
末尾になりますが、入会に当たっては、推薦してくださった今野敏理事と鈴木輝一郎先生に大変お世話になりました。改めて心より御礼申し上げます。また、入会のきっかけとなった新年会へ誘ってくれた柳蒼二郎様、出不精の私に声をかけてくれたこと、とても感謝しています。ありがとう。
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